「会社がつまらない」と感じたら読む本──『冒険する組織のつくりかた』
「頑張って成果を出しても、なんだか虚しい」「上司の指示をこなすだけの毎日に違和感がある」──そんなモヤモヤを抱えたことはありませんか。
今回紹介する『冒険する組織のつくりかた──「軍事的世界観」を抜け出す5つの思考法』(安斎勇樹著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、読者が選ぶビジネス書グランプリ2026のマネジメント部門を受賞した一冊です。著者は『問いのデザイン』『問いかけの作法』で累計10万部を超えるベストセラーを送り出してきた、組織論・ワークショップデザインの専門家。本書はその20年以上の探究を体系化した「集大成」と位置づけられています。
営業・マーケティング・マネジメントに携わる、忙しいビジネスパーソンに向けて、本書のポイントと「実際に使えるのか」という視点の両方から要約します。
本書の核心:「軍事的世界観」から「冒険的世界観」へ
本書が指摘するのは、多くの組織が無意識のうちに「軍事的世界観」で運営されているという事実です。軍事的世界観とは、働く人やお客さんを「目標達成のための道具」とみなす考え方。目標を設定し、上意下達で指示を出し、達成度を管理する──多くの企業に染み付いたこの発想そのものが、閉塞感の正体だと著者は説きます。
これに対して提示されるのが「冒険的世界観」です。不確実な世界の中で、一人ひとりが自分なりの目的を探索しながら、時には仲間と協力して新しい価値を生み出していく。冒険する組織においては、全員が組織づくりの主人公であり、その核心は「誰も自己実現を諦めない」ことにあります。本書ではONE PIECEのような冒険者たちのチームを理想像として挙げ、個人の自己実現とチームとしての成果が両立しうることを説明しており、この部分は読者からも「何度も人に紹介したくなった」と高く評価されています。
実践編:組織を変える「20のカギ」
本書は理論編と実践編の二部構成になっています。理論編では、世界観を変える5つのレンズ、新時代の組織モデル「CCM」、冒険する組織をつくる5つの基本原則が提示されます。
実践編では、目標設定・チームづくり・対話の場づくり・学習文化づくり・組織変革という5つのテーマそれぞれについて、具体的な「カギ」が20個示されます。特に多忙な読者にとって着手しやすいのは、次の2つの領域です。
- 対話の場づくり:日常業務の中に「振り返り」の機会をどう組み込むかという、明日からでも試せる工夫が多い
- 目標設定:ノルマ管理ではなく、個人の探索的な目標をどう組織の目標とすり合わせるかという視点
理論だけでなく、明日の1on1やチームミーティングで試せる粒度のアイデアが用意されている点は、実務書としての完成度の高さを感じさせます。
本書は本当に自分の職場で機能するか?
ここまで読むと「良い本だ」で終わってしまいそうですが、実際のレビューを見ると、もう一段踏み込んだ論点が浮かび上がります。
Booklogに寄せられた感想の中には、著者の思想そのものには共感しつつも「実際にこれを実行するには、目標管理・会議体・研修・組織構造など、ありとあらゆるものを変える必要がある。そのエネルギーと権力を持っている読者が、本書の読者の何%いるだろうか」という、かなり率直な指摘があります。さらに、工場のような現場で「冒険する組織」への転換を図ろうとすると、相当な苦労が予想され、うまくいかない可能性も大いにあるだろう、という声も見られました。
これは決して本書の価値を否定するものではありません。著者自身も、軍事的組織にはそれ相応の良さがあることを認めた上で議論を展開しています。ただし、本書を手に取る読者の多くは、経営者やCHRO(人事担当役員)のような組織全体を動かせる立場の人だけではなく、いちマネージャーや、決裁権を持たないビジネスパーソンも含まれるはずです。
そう考えると、本書を最大限に活かすコツは「組織全体を変えようとしない」ことかもしれません。20のカギは、必ずしも会社全体の制度改革を要求するものばかりではなく、自分のチーム、自分の1on1、自分が主催する会議といった、自分の裁量が届く範囲から始められる工夫も含まれています。「全部は変えられないが、自分の持ち場でできることは何か」という問いを持って読むことで、権限の有無にかかわらず得られるものがある本だと言えるでしょう。
まとめ
- 組織の閉塞感の正体は、無意識に染み付いた「軍事的世界観」にある
- 「冒険的世界観」では、個人の自己実現とチームの成果が両立するという発想の転換が核心
- 実践編の20のカギは、対話の場づくりや目標設定など、明日から試せる粒度の工夫が多い
- 一方で「組織全体を変える権限がない読者にはハードルが高い」という指摘も事実であり、まずは自分の裁量が届く範囲から着手する読み方がおすすめ
あなたの職場は、軍事的世界観と冒険的世界観、どちらに近いでしょうか。そしてもし後者に近づけるとしたら、あなた自身が今日から変えられる小さな一歩は何でしょうか。